Tree 大理石 |
この前、へんこのおじさんの映画館へ映画を見に行った。
アンジェイ・ワイダ監督の遺作『残像』
スターリンの時代のポーランドの前衛画家のヴワディスワフ・ストゥシュミンスキは生徒から慕われ尊敬されている大学教授でもある。美術館には彼が設計した部屋もある。
その彼は、大学へ来た文化大臣の今の政治に組した芸術への要求に真っ向から反対意見を言う。そのために大学教授の職を追われ、美術家の会員からは名前は削除され、受けた仕事は破壊され、困窮しどうしようもない状況まで追い込まれる。
自分を慕う女子学生は逮捕され、最後に政府の役人にこちら側につけば、また大学の職も与え美術家の会員にも戻すと言われ、
「お前はどちら側か」
と問われる。
ストゥシュミンスキはたった一言
「私側だ」
と答えドアを閉めて出て行くのである。
ストゥシュミンスキは実在の画家。今ではポーランドに彼の名前を取った大学もありそれを思うと実に感慨深い。
映画で問うことはひとつだけ。
自分の魂を取るか、金、名誉そして生命、、、、を取るか。
そして自分の魂を取ればどうなるのか。それでも自分の魂を取るとはどういう意味を持つのか。
長い年月にさらされ、時代が変わり、どんな体制や文化になろうとも最後に浮上して『本物』とされ生き残る芸術作品はすべて自分の『魂』を取ったものだ。それだけは絶対に確かである。
映画館ではわずかな観客しかいなかった。今の時代、この映画を上映したへんこのおじさんに心から敬意を表します。